アングル1:お金タイプのケーススタディ

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坂本美津子さんは、二人の娘を持つ三七歳の主婦。短大を出た後、小さな会社で三年間事務職として働いた後、縁あって建築関係の企業に勤めるサラリーマンと結婚しました。

夫は、その後建築資材関係の小さな会社を友人たちと作り、一男一女も生まれ、一家は、何不自由ない暮らしをしていました。

ところが順調だった夫の会社が、不景気によってみるみる苦しくなり、ついには倒産してしまったのです。

倒産すると債権者が次々とやってきて、夫の居場所を追求される毎日が続き、ついに居たたまれなくなって、一家は、夜そっと荷物をまとめて引っ越しをしました。

夫は債権者の一人である古くからの取引先で、働きながら借金を返していくことになりました。

持病を持ち病院通いをしている母と二人の子供を抱え、やむにやまれず、彼女は収入の良い仕事を探しはじめました。しかし、三七歳の主婦に高給の仕事は大変少なかったのです。彼女は友人に相談し、助言を求めるとともに、就職・転職の広告を集め、比較検討を始めました。

そしてその中の数社に履歴書を送りアタックをしました。そこで彼女は、中年女性の社会進出の壁の厚さに次々と直面したのです。応募資格が三五歳ぐらいまでという会社にも勇気を持ってチャレンジしました。三0代女性の応募できる比較的高給の仕事は営業関係の職種が多いのですが、おっとりした奥様風の彼女は、フットワークに欠けるように見えたせいか、なかなか仕事が決まりませんでした。

そんな時、「化粧品のテレホン相談員月給三0万円」という求人広告を見つけ、これなら私にもできるかもしれないと思い、祈る思いで応募したのです。

面接の当日は年齢制限を少し越えていたので、若々しい印象を与えるべく面接にのぞみました。面接の席上では、なぜそのジャケットを選んだのかと聞かれたそうです。「春らしい季節感を感じさせるものにしたいと思いました」と答えたそうです。

化粧品の会社はイメージを大切にしますから、彼女のそうしたセンスは大いに受け入れられ、ついに採用されたのです。また、家庭と、PTAの経験などで身に付けてきた、女性相手の温かい会話の能力が認められたのです。

テレホン相談というのは、実質的にはテレホン営業の仕事でした。今まで家庭の中ですごしてきたため、売り上げのしのぎをけずる競争には、なかなかなじめなかったということです。

しかし、歯をくいしばって努力するうち、次第に電話の顧客から信頼を得るようになり、現在は、「厳しい売上目標もあるけれど、目標を達成した時のヤリガイも大きい」とのこと。職場では、年下の厳しい上司もいてつらいこともあるようですが、家族のためにと、割り切って挑戦しています。

今坂本さん一家は、豊かだった時よりも助け合うようになったということです。中高年期になる年齢に、体に負担のかからないテレホン営業の仕事に就けた彼女は、ラッキーだったといえるでしょう。